退職した年のふるさと納税|退職金は上限に入らず、「退職までの給与」で決まります
最終更新日: 2026-09-24
先に結論
- 退職金をいくら受け取っても、ふるさと納税の上限は増えません。退職金の住民税は退職した時に他の所得と区別して課税され(現年分離課税)、上限を決める翌年の住民税には入らないからです。
- 失業給付(雇用保険)も入りません。非課税所得だからです。
- 上限を決めるのはその年に退職日までに受け取った給与だけです。6 月末に辞めれば、例年の 3 分の 1 程度になります。
- 辞めたまま年を越すと年末調整が無いので確定申告になり、ワンストップ特例は使えません。ふるさと納税もその確定申告に含めます。
退職した年のふるさと納税でよくある誤解が、「退職金をもらったから今年は枠が大きい」です。検索結果の上位にも「退職金は合算する?」「退職金をもらったら上限が増える?」という題の記事が並んでいます。答えは増えないです。この記事では、なぜ増えないのかを税の仕組みから説明し、辞めた月ごとの上限と、例年どおり寄付した時の損を数字で出します。
退職金が上限に入らない理由
ふるさと納税で「自己負担 2,000 円」で済む上限を決めているのは、寄付した年の翌年度の住民税の「所得割」です。控除のうち住民税の特例分は、所得割額の 20% が限度になっています(国税庁 No.1155)。
ところが退職金の住民税は、この所得割とは別に扱われます。渋谷区は「退職所得に係る住民税は通常の給与所得とは取扱いが異なり、所得の生じた年に他の所得と区別して退職した年の1月1日に住んでいた住所地の区市町村で課税されます(現年分離課税)」と説明しています。退職金を受け取る時に勤務先が住民税を差し引いて納め、そこで終わります。
| 受け取るお金 | 住民税の扱い | ふるさと納税の上限 |
|---|---|---|
| 退職までの給与・賞与 | 翌年度の所得割に入る | 入る |
| 退職金 | 退職時に他の所得と区別して課税(現年分離課税) | 入らない |
| 雇用保険の失業給付 | 非課税所得(課税されない) | 入らない |
失業給付について、目黒区は「雇用保険の失業給付金は非課税所得とされていますので、住民税は課税されません」と答えています。住民税がかからないお金は、翌年度の所得割を増やさないので、上限も増やしません。
多くのシミュレーターは「年収」を 1 つ入れる形なので、退職金を年収に足して入れると上限が大きく出ます。入れるのは退職日までに受け取った給与・賞与の合計(退職時にもらう源泉徴収票の「支払金額」)だけです。
上限は「退職までの給与」で決まる
当サイトの控除上限シミュレーターで、例年 500 万円の人が辞めた月ごとの上限を計算しました(独身・扶養なし・社会保険料は収入の 15% で概算)。
| その年の状況 | 退職までの給与 | 控除上限の目安 |
|---|---|---|
| 例年どおり働いた年 | 500 万円 | 57,480 円 |
| 9 月末に退職 | 375 万円 | 38,327 円 |
| 6 月末に退職 | 250 万円 | 21,789 円 |
| 3 月末に退職 | 125 万円 | 2,000 円(実質ゼロ) |
| 退職した翌年・1 年間無職 | 0 円 | 0 円 |
3 月末に辞めた場合、給与 125 万円では住民税の所得割がほとんど出ないので、控除できる税金が残りません。退職金を何百万円受け取っていても、この年のふるさと納税はほぼ全額が自己負担になります。自分の場合は控除上限シミュレーターに、退職までの給与だけを入れて出してください。
例年どおり寄付すると、いくら自己負担になるか
6 月末に辞めた人(上限 21,789 円)が、例年の感覚で寄付した場合の自己負担です(確定申告で控除を受ける場合)。
| 寄付額 | 自己負担(確定申告) |
|---|---|
| 20,000 円(上限内) | 2,000 円 |
| 30,000 円 | 8,971 円 |
| 50,000 円 | 25,950 円 |
| 57,000 円(例年の上限まで) | 31,892 円 |
例年の上限(約 5.7 万円)まで寄付すると、戻らない分が 3 万円を超えます。上限を超えた分は住民税の特例分で吸収されないためです(国税庁 No.1155)。
手続きは「同じ年に再就職したか」で変わる
国税庁によると、年の途中で退職しても同じ年に再就職すれば、新しい勤務先が前の勤務先の給与も含めて年末調整をします。再就職しないまま年を越すと年末調整を受けられず、所得税を納め過ぎていることがあるので、翌年に確定申告をすると還付を受けられます(国税庁 No.1910)。
| 退職した年の状況 | 年末調整 | ふるさと納税の控除の受け方 |
|---|---|---|
| 同じ年に再就職した | 新しい勤務先で受ける | ほかに確定申告が要らなければワンストップ特例を使える |
| 再就職しないまま年を越した | 受けられない | 還付のために確定申告をするなら、ふるさと納税も確定申告に含める(ワンストップ特例は無効になる) |
国税庁は「確定申告を行う方は、ふるさと納税ワンストップ特例の申請が無効となるため、ワンストップ特例の申請をした分も含めて寄附金控除額を計算する必要があります」としています(国税庁 No.1155)。退職後に寄付してワンストップ特例の申請書を出していても、翌年に還付の確定申告をするなら、その申請は効かなくなります。確定申告書にふるさと納税の分も必ず書いてください。書き方はワンストップ特例と確定申告の比較にまとめています。
いつ決めればいいか
| 時期 | やること |
|---|---|
| 退職日が決まったら | 退職までの給与・賞与の見込みを出す(退職金は数えない) |
| 退職後 | 源泉徴収票の「支払金額」で上限を計算し直す |
| 12 月 31 日 | この日までの決済がその年の寄付(決済方法別の締切) |
| 翌年 2〜3 月 | 再就職していなければ確定申告(還付とふるさと納税を一緒に) |
退職の年は、年の前半に「いつもどおり」で寄付してしまうのが一番損をしやすい形です。退職が決まっている年は、退職後に源泉徴収票を見てから寄付するのが確実です。控除は 1 月〜12 月の年単位なので(総務省 Q4)、翌年に回せば翌年の給与で計算し直せます。
よくある質問
退職金を 1,000 万円もらいました。今年はたくさん寄付できますか?
できません。退職金の住民税は退職時に他の所得と区別して課税され(現年分離課税)、ふるさと納税の上限を決める翌年度の住民税の所得割には入りません。上限は退職日までに受け取った給与・賞与だけで決まります。
失業給付を受け取っている間も寄付できますか?
寄付そのものはできますが、失業給付は非課税所得なので上限は増えません。その年に給与がなければ上限は 0 円で、寄付額の全額が自己負担になります(返礼品は届きます)。
退職したあとにワンストップ特例の申請書を出しました。大丈夫ですか?
同じ年に再就職して新しい勤務先で年末調整を受け、ほかに確定申告が要らなければそのまま使えます。再就職せず翌年に還付のための確定申告をする場合は、ワンストップ特例の申請が無効になるので、ふるさと納税の分も確定申告書に書いてください(国税庁 No.1155)。
退職した翌年の住民税が高いのはなぜですか?
住民税は前年の所得に対して課税されるため、退職した翌年にも在職中の給与に対する住民税の請求が来ます。これはふるさと納税の上限とは別の話で、前年分の住民税を納めていても、その年の上限は増えません。
確定申告の期限を過ぎてしまいました。
中途退職で年末調整を受けていない人の還付の申告は、退職した年の翌年以降 5 年以内であればできます(国税庁 No.1910)。その申告にふるさと納税の寄附金控除も含めてください。
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この記事を書いている立場について
本サイト「ふるさと控除ラボ」はポータルサイトではなく、寄付の受付も返礼品の発送も行っていません。だから「今年は寄付を控えた方がいい」と書けます。記事の下書きには生成AIを補助的に使い、公開前に運営者本人が国税庁・総務省・自治体の公表資料と突き合わせて確認しています。
金額は当サイトの控除上限シミュレーターの計算式で出しています。実際の上限は他の所得控除でも変わるので、大きな金額を寄付する前にはお住まいの自治体にも確認してください。
出典
- 渋谷区「退職所得に係る住民税」— 所得の生じた年に他の所得と区別して課税(現年分離課税) https://www.city.shibuya.tokyo.jp/kurashi/juminzei/kyuyo/retire.html
- 総務省「平成25年1月1日以降の退職所得に対する住民税の特別徴収について」— 退職所得に対する住民税の計算と課税する市町村 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/65871.html
- 目黒区「雇用保険の失業給付金は住民税が課税されることは」— 非課税所得のため住民税は課税されない https://www.city.meguro.tokyo.jp/zeimu/kusei/faq/juminzei-10.html
- 国税庁 タックスアンサー No.1910「中途退職で年末調整を受けていないとき」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1910.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1155「ふるさと納税(寄附金控除)」— 住民税特例分は所得割額の20%が限度/確定申告をするとワンストップ特例の申請は無効 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1155.htm
- 総務省「ふるさと納税ポータル よくある質問」Q4(1月〜12月の年単位) https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/faq/
- 控除上限額・自己負担額の計算: 当サイトの計算エンジン(総務省の目安表と自動テストで照合)