ふるさと納税はいつの年収で計算する?——「寄付する年」の1月〜12月です
最終更新日: 2026-09-24
先に結論
- 使うのは寄付する年の1月〜12月の収入です。前年の源泉徴収票は、今年の見込みを立てるための材料にすぎません。
- 上限額は年収に比例して滑らかには増えません。所得税の税率が変わる境目で段差になり、年収が1万円違うだけで上限が約1万3千円変わる場所があります(年収676万円あたり)。
- 上限を超えても全額が損になるわけではありません。超えた分のうち自己負担になるのは約7〜8割です(総務省の控除式から計算)。
- だから安全側の決め方は「上限の◯割まで」ではなく、段差の下側の上限で見ておくことです。
使うのは、寄付する年の1月〜12月の収入です
ふるさと納税の上限額は、寄付をした年の所得をもとに決まります。前年の年収ではありません。理由は、控除がどの年の税金から引かれるかを見ると分かります。総務省はこう書いています。
確定申告を行うと、前述の「控除額の計算」に沿って所得税と住民税の控除額がそれぞれ決まり、所得税分はその年の所得税から控除(還付)され、住民税分は翌年度の住民税から控除(住民税の減額)されます。
総務省「ふるさと納税のしくみ|税金の控除について」
所得税は「その年の所得税」から戻ってきます。住民税は「翌年度の住民税」から引かれますが、その翌年度の住民税は寄付をした年の所得で計算されたものです。どちらも土台は寄付をした年の所得です。前年の年収が計算に入る場面はありません。
控除そのものの仕組みはふるさと納税の仕組みにまとめています。
まだ終わっていない年の年収を、どうやって決めるのですか
年内に寄付する以上、その年の年収は確定していません。見込みで決めることになります。材料は次の2つです。
- 前年の源泉徴収票の「支払金額」——去年と働き方が変わっていないなら、これがいちばん近い数字です。
- 直近の給与明細の総支給額——「支払金額 ÷ 経過月数 × 12 + 賞与の見込み」で今年の着地を出します。
ふるさと納税の「年収」とは(額面=源泉徴収票の支払金額)
使うのは額面であって手取りではありません。源泉徴収票でいえば左上の「支払金額」です。手取りで計算すると上限を低く見積もることになります。個人事業主の場合は売上ではなく、経費と青色申告特別控除を引いた後の所得で計算します(個人事業主の上限額の計算)。
いちばん確実なのは、12月に源泉徴収票を受け取ってから寄付することです。ただし寄付には12月31日の締切があり、決済が年内に完了している必要があります。年末の駆け込みは在庫と決済の両方でつまずきやすいところです。
「上限の7割まで」にしておけば安心、と書いてありますが
そのやり方は、上限が年収に比例していれば正しいものです
ところが上限は比例しません。所得税の税率が変わる境目で、上限が一段跳ね上がります。境目のすぐ上にいると思って寄付したのに実際は下だった場合、率で取ったマージンでは足りないことがあります。
なぜ段差ができるのか。住民税の特例分の計算式を見ると分かります。
住民税からの控除(特例分) =(ふるさと納税額 - 2,000円)×(100% - 10%(基本分) - 所得税の税率)
総務省「ふるさと納税のしくみ|税金の控除について」
この特例分は住民税所得割額の2割が上限です。逆算すると、上限額は「住民税所得割額 × 20% ÷(90% - 所得税の税率 × 1.021)+ 2,000円」という形になります。分母に所得税の税率が入っているため、税率が10%から20%に上がると分母が0.7979(0.9 - 0.1021)から0.6958(0.9 - 0.2042)に縮み、上限が一気に大きくなります。1.021は復興特別所得税の分です。
所得税の税率が変わるのは、課税される所得金額が195万円・330万円・695万円などを超えるときです(国税庁 No.2260)。これを年収の目盛りに直すと、次の位置に段差が現れます。
| 年収 | 所得税の税率 | 上限額 | 1万円の年収差で動く額 |
|---|---|---|---|
| 527万円 | 5% | 61,603円 | +3,988円 |
| 528万円 | 10% | 65,591円 | |
| 675万円 | 10% | 89,905円 | +13,129円 |
| 676万円 | 20% | 103,034円 | |
| 1,119万円 | 20% | 206,254円 | +9,676円 |
| 1,120万円 | 23% | 215,930円 |
年収676万円あたりがいちばん危ないところです。見込みで676万円と置いて上限103,034円の9割(92,731円)まで寄付し、実際の着地が675万円だった場合、本当の上限は89,905円です。約2,800円が上限超過になります。率で9割のマージンを取っていても足りません。
逆にいえば、段差から離れている人は率で決めても問題ありません。段差の近く(年収520万円台・670万円台・1,110万円台)にいる人だけ、下側の上限で見ておけば安全です。この境目の位置は家族構成や社会保険料の実額で動きます。自分の数字で確かめるならシミュレーターに見込み年収を高め・低めの2通りで入れて、上限が飛ぶかどうかを見てください。
見込みが外れて上限を超えたら、いくら損するのですか
「全額自己負担になる」と書かれていることがありますが、正しくありません。総務省の説明はこうです。
特例分が住民税所得割額の2割を超える場合は、(中略)3つの控除を合計しても(ふるさと納税額-2,000円)の全額が控除されず、実質負担額は2,000円を超えます。
総務省「ふるさと納税のしくみ|税金の控除について」
頭打ちになるのは3つの控除のうち特例分だけです。所得税からの控除と住民税の基本分(10%)は、上限を超えた部分にも効きます。したがって超過分のうち自己負担になるのは「100% - 10% - 所得税の税率 × 1.021」です(1.021は復興特別所得税の分。令和19年中の寄付まで加算されます)。
| 年収の目安 | 所得税の税率 | 超過分の自己負担率 | 1万円超過したとき | 3万円超過したとき |
|---|---|---|---|---|
| 〜約527万円 | 5% | 約84.9% | 約8,490円 | 約25,469円 |
| 約528万〜675万円 | 10% | 約79.8% | 約7,979円 | 約23,937円 |
| 約676万〜1,119万円 | 20% | 約69.6% | 約6,958円 | 約20,874円 |
| 約1,120万円〜 | 23% | 約66.5% | 約6,652円 | 約19,955円 |
年収500万円の人が1万円超過しても、増える持ち出しは約8,500円です。返礼品はその分も受け取っています。上限をぴったり当てにいって寄付しそびれるより、少し超える方が結果的に得になる場面もあります。
ワンストップ特例を使う場合も考え方は同じです。この場合は所得税からの控除が行われず、その分も含めた全額が翌年度の住民税から控除されます(総務省)。合計の控除額が変わる仕組みではありません。
なお、控除の対象になる寄付額そのものにも上限があり、所得税では総所得金額等の40%、住民税では30%までです。ここに当たるほど寄付する人は上の表の範囲を超えます。
前年と年収が大きく変わる年は、何を見ればいいですか
迷ったときの基準は1つです。その年の源泉徴収票の「支払金額」に載るものが、この計算でいう年収です。
| ケース | この計算に入れるもの | 見落としやすい点 |
|---|---|---|
| 年の途中で転職した | 前職と現職の支払金額を合算した額 | 前職の源泉徴収票が要ります。現職の年末調整に出していれば、12月の源泉徴収票に合算されています |
| 年の途中で退職して、その後働いていない | 退職までに受け取った給与のみ | 前年の年収で計算すると大きく超過します |
| 産休・育休に入った | その年に勤務先から受け取った給与のみ | 出産手当金や育児休業給付金は勤務先が払う給与ではないため、支払金額には含まれません |
| 新卒1年目 | 入社月から12月までの給与 | 12か月分ではありません。1年目の上限は思ったより小さくなります |
| 副業がある | 給与以外の所得も含めた所得 | 給与だけで計算すると上限を低く見積もります |
| 退職金・一時所得があった | — | 課税の扱いが給与と異なります。自分で判断せず税務署または市区町村に確認してください |
共働きの場合、上限は世帯年収ではなく寄付する人本人の年収で決まります。名義を分けるかどうかで結果が変わるため、共働き夫婦のふるさと納税も合わせて確認してください。
税金はいつ、どう戻ってくるのですか
- 確定申告をした場合——所得税分はその年の所得税から還付され、住民税分は翌年度の住民税が減額されます(翌年6月から1年かけて)。
- ワンストップ特例を使った場合——所得税からの控除は行われず、全額が翌年度の住民税から控除されます。
実際に引かれたかどうかは、翌年6月ごろに届く住民税決定通知書で確認できます。手順は控除されているかの確認ページにあります。ワンストップの申請を出しそびれた場合でも取り返せます(ワンストップ申請を忘れたときの対処)。
自分の年収で上限を出す
ここまでの計算は独身・扶養なしを前提にしています。家族構成・社会保険料・住宅ローン控除で上限は変わります。シミュレーターに見込み年収を入れれば、内訳(課税所得・所得税の税率・住民税所得割額)まで表示されるので、自分が段差のどちら側にいるかも確認できます。年収別のおおよその額だけ知りたい場合は早見表を見てください。
あわせて読む
出典
- 総務省 ふるさと納税ポータルサイト「税金の控除について」 https://www.soumu.go.jp/main_sosiki/jichi_zeisei/czaisei/czaisei_seido/furusato/mechanism/deduction.html
- 国税庁 タックスアンサー No.2260「所得税の税率」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm
- 国税庁 タックスアンサー No.1155「ふるさと納税(寄附金控除)」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1155.htm
- 表の金額は当サイトのシミュレーター(総務省の控除式を実装)で算出しました。計算式は還元率の計算方法および仕組みの解説に記載しています。