会社員のふるさと納税のやり方

最終更新日: 2026-08-25

先に結論

  • 「やり方」を説明する記事はどれもワンストップ特例を最後の手順に置いています。ところが地方税法は、この申請を「特例控除対象寄附金を支出する際」=寄付するそのときに行うと定めています(附則第7条第1項)。申込画面のチェックボックスがそれです。寄付ボタンを押した時点で、もう選び終わっています。
  • だから寄付する前に決めることが2つあります。①世帯の誰がいくら寄付するか ②今年、確定申告をするかです。
  • ①を外すと実額で損をします。共働きで半々に分けると自己負担が最大29,550円増えます(実測)。正しくは「収入の多いほうの上限まで寄せて、あふれた分だけ配偶者へ」です。
  • ②は控除の合計額を変えません。年収300万円〜1,000万円の7通りを実測して、6通りが差0円、残り1通りも円未満の四捨五入による1円差だけでした。変わるのは控除の出どころだけ。ただし住宅ローン控除で所得税を使い切っている人は例外で、確定申告を選ぶと控除が最大15,519円減ります。
  • 「翌年1月10日まで」は申請書の期限ではありません。法が1月10日と定めているのは住所等の変更届出です(同第4項・第11項)。申請書そのものは「支出する際」なので、寄付のたびにその場で出すのが唯一のずれない運用です。

ふるさと納税の「やり方」を調べると、だいたい同じ手順が出てきます。上限額を調べる、寄付先を選ぶ、申し込む、返礼品と受領証明書を受け取る、控除の手続きをする——この5つです。

この並びには問題があります。ワンストップ特例が最後に置かれていることです。地方税法の条文はこうなっています。

寄附金税額控除額の控除を受けようとする場合には、(中略)申告書の提出に代えて、特例控除対象寄附金を支出する際、総務省令で定めるところにより、特例控除対象寄附金を受領する都道府県の知事又は市町村若しくは特別区の長(中略)に対し、(中略)申告特例の求めを行うことができる。

地方税法 附則第7条第1項(e-Gov 法令検索で全文を確認できます)

「支出する際」——つまり寄付するそのときです。そして同じ条の第3項は、この求めを申請書によって行わなければならないと定めています。

申告特例の求めは、総務省令で定めるところにより、次に掲げる事項を記載した申請書により行わなければならない
一 当該申告特例の求めを行う者の氏名、住所及び生年月日(以下略)

地方税法 附則第7条第3項

2つを合わせると、法の建て付けはこうです。申請書を、寄付するそのときに出す。実務では申請書が寄付のあとに郵送されてくるので、そこにずれがありますが、法が想定している位置は最後ではなく寄付と同時です。

申込画面のチェックだけでは控除されません。ポータルサイトの「ワンストップ特例を利用する」というチェックは、法律上の申請そのものではありません。自治体に申請書を送ってもらうための意思表示です。控除を受けるには、届いた申請書を本人確認書類とともに返送する必要があります(附則第7条第3項)。チェックしたことで手続きが終わったと思い込むのが、いちばん多い取りこぼし方です。

そして申請書には申請する本人の氏名・住所・生年月日を書きます(第3項第1号)。誰の名義で寄付するかは、この時点でもう動かせません。寄付ボタンを押す前に決まっていなければならないことがあるのはそのためです。このページはそこから始めます。手順そのものは最後の章に表でまとめてあります。

1. 寄付する前に決めること① 世帯の誰が、いくら寄付するか

ふるさと納税の上限額は、世帯の収入ではなく寄付する人ひとりの収入で決まります。総務省もこう書いています。

実際のふるさと納税枠は、寄附される本人の収入や他の控除によって異なります。

総務省|ふるさと納税のしくみ・税金の控除について

同じ10万円を寄付しても、誰の名義で寄付するかで自己負担がこれだけ変わります。

寄付する人の年収上限額10万円寄付したときの自己負担判定
300万円28,267円66,559円上限を超えている
400万円42,167円54,049円上限を超えている
500万円61,029円37,073円上限を超えている
600万円77,322円22,410円上限を超えている
700万円108,208円2,001円上限の範囲内
800万円129,766円2,001円上限の範囲内
1,000万円177,194円2,001円上限の範囲内

年収300万円の人が10万円寄付すると、上限28,267円を超えた分は戻らないので、自己負担は66,559円です。年収700万円の人なら同じ10万円で2,001円差は64,558円あります。寄付先も返礼品も金額も同じで、名義だけが違う場合の差です。

共働きは「半々」にすると損をする

ここでほとんどの人が半分ずつにします。夫婦で仲良く、という発想としては自然ですが、実測すると常に損です。年収700万円と400万円の共働き(上限はそれぞれ108,208円と42,167円)で、世帯の寄付額ごとに3つの分け方を比べます。太字がその行のいちばん安い自己負担です。

世帯で寄付する合計額全額を年収の多いほうで上限まで寄せて、あふれた分だけ配偶者へ半々に分ける
20,000円2,001円2,001円
全額を1人で(分ける必要なし)
4,001円
50,000円2,001円2,001円
全額を1人で(分ける必要なし)
4,001円
100,000円2,001円2,001円
全額を1人で(分ける必要なし)
11,050円
120,000円12,612円3,999円
108,208円+11,792円
20,050円
150,000円39,612円4,000円
108,208円+41,792円
33,550円
200,000円84,612円48,661円
108,208円+91,792円
56,050円

読み方は単純です。

  • 年収の多いほうの上限に収まるなら、その1人にまとめる。自己負担2,000円は寄付した人ごとにかかります。2人で分けると2,000円が2回になるだけです。世帯20,000円なら1人2,001円に対して半々は4,001円です。
  • 上限を超えるぶんだけ、配偶者に回す。世帯150,000円を全部年収700万円側で寄付すると39,612円、上限108,208円まで寄せて残り41,792円を配偶者に回すと4,000円。同じ150,000円を寄付して、差は35,612円です。
  • 半々にはしない。この表のどの行でも、半々が最安になることはありませんでした。

できないこと:名義を借りる

「収入の多いほうの名義にする」のは、その人が実際に自分のお金で寄付する場合の話です。ワンストップ特例の申請書には申請する本人の住所・氏名・生年月日を書くと法で定められていて(附則第7条第3項)、控除を受けるのはそこに書かれた本人です。収入のない配偶者の名義で寄付しても、その人に控除する住民税が無ければ控除は発生しません。

共働き世帯の分け方は共働き世帯のふるさと納税で、上限額の出し方は早見表に自分の条件がないときで詳しく扱っています。

2. 寄付する前に決めること② 今年、確定申告をするか

ワンストップ特例と確定申告のどちらを選ぶか。「どちらがお得か」という記事をよく見かけますが、控除の合計額は変わりません。実測した結果です。

年収ワンストップ
所得税から
ワンストップ
住民税から
ワンストップ
合計
確定申告
所得税から
確定申告
住民税から
確定申告
合計
300万円
寄付 28,000円
0円26,000円26,000円1,327円24,673円26,000円0円
400万円
寄付 42,000円
0円40,000円40,000円2,042円37,958円40,000円0円
500万円
寄付 61,000円
0円59,000円59,000円6,024円52,976円59,000円0円
600万円
寄付 77,000円
0円75,001円75,001円7,658円67,343円75,001円0円
700万円
寄付 108,000円
0円106,000円106,000円21,645円84,355円106,000円0円
800万円
寄付 129,000円
0円127,001円127,001円25,933円101,067円127,000円1円
1,000万円
寄付 177,000円
0円175,000円175,000円35,735円139,265円175,000円0円

合計は一致します。変わるのはどこから引かれるかだけです。総務省の説明も同じです。

ふるさと納税ワンストップ特例の適用を受ける方は、所得税からの控除は発生せず、ふるさと納税を行った翌年の6月以降に支払う住民税の減額という形で控除が行われます。

総務省|ふるさと納税ワンストップ特例制度について

つまり確定申告を選ぶと一部が翌年の春に現金で還付され、ワンストップを選ぶと全額が翌年6月からの住民税の天引きが減る形になります。手取りに現れる時期が違うだけで、1年を通した合計は同じです。「お得なほう」を選ぶ判断ではありません。

表のうち800万円の行だけ合計が1円ずれます。これは円未満の四捨五入によるもので、制度上の差ではありません。丸める前の金額は一致します。

ワンストップが使えなくなる4つの条件(条文にあります)

選べるのは、そもそもワンストップが使える人だけです。地方税法附則第7条第6項は、申請が「なかつたものとみなす」条件を4つ挙げています。ここは条文そのものを載せます。

無効になる条件(条文つき)無効になる範囲
一号その年について確定申告をしなければならなくなったとき
「当該申告特例対象年の年分の所得税について所得税法第百二十一条の規定の適用を受けないこととなつたとき。」
その年の申請が全部
二号住民税の申告書を出したとき(確定申告書を出した場合を含む)
「当該申告特例対象年の翌年の四月一日の属する年度分の道府県民税の所得割について第四十五条の二の規定による申告書の提出をしたとき。」
その年の申請が全部
三号寄付した自治体が6つ以上になったとき
「当該申告特例対象年に支出した特例控除対象寄附金について、前項の規定により申告特例通知書を送付した都道府県知事等の数が五を超えたとき。」
その年の申請が全部
四号1月1日時点の住所地と、申請書に書いた住所地の市区町村が違っていたとき
「当該申告特例対象年に支出した特例控除対象寄附金について、前項の規定により申告特例通知書の送付を受けた市町村長が賦課期日現在における住所所在地の市町村長と異なつたとき。」
その自治体の分だけ

いちばん見落とされるのが三号です。6自治体目に寄付した時点で、それまでに出した5件分もまとめて無効になります。条文は無効の範囲を「第四号に該当する場合にあつては、同号に係るものに限る」と限定していて、一号から三号にはこの限定がありません。つまり四号(引っ越し)だけがその自治体の分に限られ、残りはその年の申請が全部消えます。

同じ自治体に複数回寄付しても1団体と数えます。数えるのは自治体の数であって寄付の回数ではありません(総務省も「ふるさと納税先の自治体数が5団体以内である場合に限り」と書いています)。

一号と二号は分かれています。副業の所得が20万円を超えて確定申告の義務が生じたなら一号(所得税法第121条の適用を受けなくなった)に、医療費控除を受けたい、住宅ローン控除の1年目のように義務は無いが自分から確定申告書を出したなら二号に当たります(第1項は、確定申告書の提出を住民税の申告書の提出とみなす規定を含むと明記しています)。どちらでも結果は同じで、その年のワンストップは全件無効です。寄付した全件を確定申告書に書き直してください。

住宅ローン控除がある人だけは、選び方で控除額が変わる

1つだけ例外があります。住宅ローン控除で所得税を使い切っている人です。確定申告の寄附金控除は所得税から引く仕組みなので、引く相手の所得税が残っていないと、その分が消えます。

ここで大事なのは「ローン控除があるかどうか」ではなく「所得税が残っているかどうか」です。上2行が、ローン控除があっても所得税が残っている例です。

年収ローン控除後に残る所得税寄付額ワンストップの控除合計確定申告の控除合計確定申告を選んだ場合の差
700万円
ローン控除 100,000円
176,500円108,000円106,000円106,000円0円
どちらでも同じ
700万円
ローン控除 200,000円
76,500円108,000円106,000円106,000円0円
どちらでも同じ
500万円
ローン控除 200,000円
0円35,000円33,000円29,631円−3,369円
600万円
ローン控除 200,000円
0円64,000円62,000円55,670円−6,330円
600万円
ローン控除 300,000円
0円47,000円45,001円40,406円−4,595円
700万円
ローン控除 300,000円
0円78,000円76,000円60,481円−15,519円
700万円
ローン控除 400,000円
0円62,000円60,000円47,748円−12,252円

所得税が残っている2件は差0円で、ワンストップでも確定申告でも同じです。所得税が0円になっている行だけ差が出ます。いちばん大きいのは年収700万円・ローン控除300,000円のケースで、確定申告を選ぶと控除が15,519円少なくなります。この人はワンストップを使うべきです。

さらに、住宅ローン控除は上限額そのものも下げます。年収700万円で、ローン控除が無ければ上限108,208円のところ、ローン控除400,000円だと62,444円まで落ちます(差45,764円)。所得税が0円になると、引ける先が住民税だけになるためです。

住宅ローン控除との併用は判断が分かれるところが多いので、住宅ローン控除とふるさと納税の併用で別に扱っています。1年目は確定申告が必須でワンストップが選べない点もそちらに書いてあります。

3. 「翌年1月10日まで」は申請書の期限ではない

ワンストップ特例の説明にはほぼ必ず「翌年1月10日必着」と書いてあります。法令を読むと、1月10日はそこではありません。

何の期限かいつまで根拠種類
ワンストップ特例の申請寄付をするそのとき
条文は「特例控除対象寄附金を支出する際」
地方税法 附則第7条第1項・第9項法令・通達
申請書に書いた住所・氏名が変わったときの変更届出寄付した翌年の1月10日まで同 第4項・第11項法令・通達
自治体から、あなたの住所地の市区町村への通知寄付した翌年の1月31日まで
あなたの作業ではありません
同 第5項・第12項法令・通達
確定申告寄付した翌年の3月15日まで国税庁 タックスアンサー No.2020法令・通達
還付申告
確定申告の義務がない給与所得者の場合
寄付した翌年の1月1日から5年間国税庁 タックスアンサー No.2030法令・通達
自治体が案内している申請書の必着日自治体ごとに違う
翌年1月10日必着としている自治体が多い
法ではなく各自治体の事務処理の都合法令ではない

法が1月10日と定めているのは、申請書を出したあとに住所や氏名が変わった場合の変更届出です(附則第7条第4項・第11項)。1月31日は自治体があなたの住所地の市区町村に通知を送る期限で(同第5項・第12項)、あなたの作業ではありません。

では申請書はいつまでか。法は「支出する際」としか書いていません。実務上は、自治体が1月31日までに通知を送れるよう逆算して各自治体が独自に必着日を設けており、その多くが1月10日です。だから「1月10日必着」という案内自体は正しい運用です。ただし法の期限ではないので自治体ごとに違い得ます

ここから導かれる結論は1つです。年末にまとめて出そうとしない。寄付するたびに、その場で申請してください。法の書き方(「支出する際」)と一致し、自治体ごとの締切の違いにも巻き込まれません。

期限を過ぎてしまった場合はワンストップ特例を忘れたときを見てください。確定申告の義務がない給与所得者なら、還付申告は翌年1月1日から5年間できます(国税庁 No.2030)。まだ間に合います。

4. 上限額は12月31日まで確定しない

上限額はその年の所得と控除で決まるので、年が終わるまで確定しません。年の途中で使うのは見込み額です。

だから寄付は見込みより少し低めで止めるのが安全です。低めに外したときの損は0円(枠が余るだけ)ですが、高めに外すと超過分は全額自己負担になります。上の表で年収300万円の人が10万円寄付したときの66,559円が、その形です。

ボーナスが減った、転職した、育休に入った——年内に収入が動いたら、12月にもう一度計算し直してください

計算は上限額シミュレーター、年収別の一覧は早見表、早見表に条件が無い人はこちら。当サイトの計算値と総務省の公表値の突き合わせは精度検証で公開しています。

5. 決まったあとの手順

ここまでの2つが決まっていれば、残りは手を動かすだけです。

手順やること具体的につまずくところ
1上限額を出す源泉徴収票の「社会保険料等の金額」を使う。前年の票でよい年収の15%という概算のままだと数千円ずれる
2誰がいくら寄付するか決める上限に収まるなら1人に寄せる。あふれた分だけ配偶者へ半々に分けると自己負担が増える
3確定申告をする年かどうか決める医療費控除・住宅ローン控除1年目・副業20万円超なら確定申告決めずに寄付すると、申込画面のチェックで確定してしまう
4寄付を申し込む申込画面で「ワンストップ特例を利用する」を寄付ごとにチェック自治体ごとに必要。1件チェックし忘れるとその分だけ控除されない
5届いた申請書を返送する本人確認書類を添えて、寄付した自治体それぞれに送る6自治体目に寄付した時点で、それまでの5件も無効になる(附則第7条第6項三号)
6翌年に控除を確認する6月ごろ届く住民税決定通知書で、寄付額−2,000円が引かれているか見る足りなくても5年以内ならやり直せる(国税庁 No.2030)

このページの前提と限界

  • 金額はすべて当サイトの計算エンジンの出力です。社会保険料は年収の15%として概算しています。実額を入れると結果は変わります。
  • 扶養親族なし・配偶者控除なしで計算しています。共働きの例は、どちらも配偶者控除の対象外である前提です。
  • 給与所得だけを前提にしています。事業所得・不動産所得・年金・退職金・株の利益がある場合はこの計算では出せません。
  • 条文はe-Gov 法令検索の地方税法本文から引用し、引用箇所を明記しています。制度の解釈が分かれる場合は、お住まいの自治体の案内が優先されます。

よくある質問

ワンストップ特例を申請したあとに確定申告をしても大丈夫ですか

確定申告をした時点でワンストップの申請は無効になります(附則第7条第6項二号)。ただしその年に寄付した全件を確定申告書に書けば、控除はきちんと受けられます。書き漏らした分だけが控除されません。受領証明書の枚数と、申告した件数を突き合わせてください。

6自治体以上に寄付してしまいました

ワンストップはその年の全件が無効になります(同六項三号)。確定申告で全件を申告してください。確定申告の義務がない給与所得者なら、還付申告として翌年1月1日から5年間できます。

寄付したあとに引っ越しました

翌年1月10日までに、寄付した各自治体へ変更届出を出してください(附則第7条第4項・第11項)。出さないと、その自治体の分だけが無効になります(同六項四号)。

ワンストップと確定申告、結局どちらが得ですか

住宅ローン控除で所得税を使い切っていないなら、控除の合計額は同じです(上の表)。判断材料は損得ではなく、その年に確定申告をするかどうかです。

自己負担2,000円は世帯で1回ですか

寄付した人ごとにかかります。夫婦それぞれが寄付すると合計4,000円です。だから片方の上限に収まる金額なら、1人にまとめたほうが安くなります(上の表)。

あわせて読む

出典

金額はすべて当サイトの計算エンジン(src/simulator.js)の出力です。社会保険料を明示していない計算では年収の15%として概算しています。実際の控除額は自治体の計算によります。