ふるさと納税と医療費控除の併用|上限が下がる幅と、見落としやすい段差

最終更新日: 2026-08-27

先に結論

  • 医療費控除とふるさと納税は併用できます。ただし上限額は下がります。医療費控除は所得控除なので、課税される所得が減り、その分ふるさと納税の枠も減ります。
  • 下がり幅の目安は医療費控除額の1.3〜2.9%。医療費控除が10万円なら、上限は2,222〜2,944円下がります(年収300万〜1,000万・3つの家族構成で計算)。
  • ただし段差があります。所得税の税率区分の境をまたぐと、比率どおりには下がりません。年収800万円(共働き+子1人(大学生))では、医療費控除が31万円のところで1万円増やしただけで上限が13,841円落ちます(121,143円 → 120,855円)。計算した21通りのうち7通りでこの段差が出ました。
  • 金額より大事な話。医療費控除を受けるには確定申告が要ります。確定申告をした時点で、提出済みのワンストップ特例の申請は全部無効になります。寄付した分を申告書に書き忘れると、ふるさと納税の控除がまるごと消えます。

「医療費がかさんだ年はふるさと納税をどうすればいいのか」という問いには、金額の話と手続きの話の2つがあります。実害が大きいのは手続きのほうです。先に金額を出してから、手続きの落とし穴を説明します。

このページの数字は、どこかの表を書き写したものではありません。当サイトが公開している計算エンジンに実際に計算させた出力です。総務省の公表値と突き合わせた結果も公開しています。

1. いくら下がるのか

年収・家族構成・医療費控除額べつの下がり幅

「医療費控除なし」の列がふだんの上限額で、右の列はそこからいくら減るかです。

年収医療費控除なし10万円20万円30万円50万円100万円
独身・共働き
300万円28,267円−2,356−4,711−7,067−11,779−23,712
400万円42,167円−2,356−4,712−7,068−11,779−23,559
500万円57,480円−2,356−4,712−7,068−11,779−23,559
600万円77,322円−2,506−5,013−7,520−16,308−28,088
700万円108,208円−2,874−18,604−21,110−26,123−38,656
800万円129,766円−2,874−5,749−8,623−14,372−41,415
1,000万円177,194円−2,875−5,749−8,624−14,372−28,744
夫婦(配偶者控除あり)
300万円19,904円−2,356−5,460−7,682−12,127−17,904
400万円33,803円−2,355−4,711−7,067−11,779−24,026
500万円49,705円−2,944−5,300−7,656−12,368−24,147
600万円69,051円−6,388−8,744−11,100−15,812−28,180
700万円86,346円−2,507−5,013−7,520−12,533−25,066
800万円120,281円−2,875−5,749−8,624−14,372−40,202
1,000万円167,708円−2,874−5,749−8,623−14,372−28,744
共働き+子1人(大学生)
300万円14,777円−2,222−4,444−6,666−10,666−12,777
400万円29,445円−2,356−4,712−7,067−12,668−23,779
500万円44,758円−2,356−4,712−7,067−11,779−23,558
600万円62,192円−2,356−4,712−7,068−12,958−25,679
700万円83,338円−2,507−5,013−7,520−12,533−28,450
800万円116,831円−2,874−5,748−8,623−27,227−39,759
1,000万円164,259円−2,875−5,749−8,623−14,372−28,744

単位は円。色の付いたセルは所得税の税率区分をまたいだあとの値で、比率どおりに下がっていません。社会保険料は年収の15%として概算しています。

色の付いていないセルを見ると、下がり方はほぼ一定の比率です。医療費控除額に対して1.3〜2.9%の範囲に収まります。医療費控除が10万円なら2,222〜2,944円、というのが目安です。

比率が下の端(1.3%)まで落ちるのは、医療費控除が課税所得に対して大きすぎる場合です。実測では共働き+子1人(大学生)・年収300万円で医療費控除が100万円のときがそれで、課税所得がほとんど残らないため、控除を増やしてもそれ以上は上限が下がりません。年収に対して医療費控除が数十万円までなら、2.5%前後で見ておけば大きく外しません。

なぜその比率になるのか

ふるさと納税の上限は、大づかみに言うと住民税の所得割額の20%を軸に決まります。医療費控除で課税所得が10万円減ると、住民税の所得割(税率10%)はちょうど1万円減ります。その20%が2,000円で、これが上限の減り方の中心です。実際の減り方が2,000円より少し大きいのは、上限の計算式が所得税の税率で割る形になっているためです。

2. 段差はどこで起きるのか

ここが、目安表を眺めていても出てこない部分です。

所得税の税率が変わる瞬間に、上限が落ちる

所得税は課税所得の額で税率が変わります。区分の境は1,949,000円 / 3,299,000円 / 6,949,000円 / 8,999,000円です。医療費控除で課税所得がこの境を下回ると、税率が1段下がります。

ところが、ふるさと納税の上限額の計算式はその税率で割る形になっています。税率が下がると割る数が大きくなるので、上限額は税率が変わったところで段差になって落ちます

実測(共働き+子1人(大学生)・年収800万円)

  • 医療費控除 30万円 → 上限 121,143円
  • 医療費控除 31万円 → 上限 120,855円

医療費控除が1万円増えただけで、上限が13,841円落ちています。このとき課税所得は3,290,000円で、区分の境(3,299,000円)を下回っています。

段差が出る組み合わせ

計算した21通りのうち、段差が出たのは7通りでした。

家族構成年収段差が出る医療費控除額1万円増やしたときの落差そのときの課税所得
共働き+子1人(大学生)700万円91万円3,770円1,940,000円
共働き+子1人(大学生)800万円31万円13,841円3,290,000円
夫婦(配偶者控除あり)600万円10万円4,132円1,940,000円
夫婦(配偶者控除あり)800万円56万円13,363円3,290,000円
独身・共働き600万円48万円4,056円1,940,000円
独身・共働き700万円19万円13,179円3,290,000円
独身・共働き800万円94万円13,179円3,290,000円

いずれも「そのときの課税所得」が区分の境をわずかに下回っています。自分の課税所得が境の近くにいるかどうかが、段差に当たるかどうかを分けます。

段差に当たったらどうするか

医療費控除を減らして段差を避ける、という考え方はおすすめしません。医療費控除そのものが所得税と住民税を直接減らすので、ふるさと納税の枠が減る額より、控除で戻る額のほうが大きいのが普通です。やることは1つで、下がったあとの上限額で寄付することです。

控除上限額シミュレーターに医療費控除の入力欄があります。医療費控除の額を入れれば、段差も含めた上限額がそのまま出ます。

3. 手続きの落とし穴(こちらのほうが実害が大きい)

医療費控除を受ける年は、ワンストップ特例が使えない

ワンストップ特例は「確定申告をしない人」のための仕組みです。医療費控除は確定申告でしか受けられないので、この2つは同じ年に両立しません

怖いのは、先にワンストップ特例を申請していた場合です。あとから確定申告をすると、提出済みのワンストップ申請はすべて無効になります。自治体から「無効になりました」と連絡が来るわけでもありません。

ここで控除がまるごと消えます

ワンストップ申請が無効になったのに、確定申告書にふるさと納税の寄付を書かなかった場合、その年の寄付は1円も控除されません。全額が自己負担になります。

やることは単純です。確定申告書に、その年に寄付した全自治体分を寄附金控除として書く。ワンストップを申請済みかどうかは関係ありません。

年末に医療費が増えそうなときの順番

  1. 先に医療費控除の額を固める。「その年に払った医療費の合計 −(保険金などで戻った額)− 10万円」が控除額です(所得が200万円未満の人は10万円ではなく所得の5%)。
  2. その額を入れて上限を計算する。シミュレーターの「医療費控除の額」に入れます。
  3. 出た上限の範囲で寄付する。医療費控除なしの上限で寄付していると、その差額は自己負担になります。
  4. 確定申告で、医療費控除と寄附金控除の両方を書く。片方だけ書くのがいちばん多い失敗です。

逆に、年内に医療費控除が確定しないとき

12月に手術や入院が入ると、年内に医療費の合計が読めないことがあります。その場合は低いほうの上限で寄付しておくのが安全です。上限を下回るぶんには、自己負担は2,000円のままです。上回った分だけが自己負担になります。

4. よくある質問

医療費控除があると、ふるさと納税は損になりますか

なりません。上限が下がるだけで、下がったあとの上限内で寄付すれば自己負担は2,000円のままです。医療費控除そのものは税金を減らすので、合計では得をしています。

家族の医療費をまとめて申告する場合はどうなりますか

医療費控除は生計を一にする家族分をまとめて、誰か1人が申告できます。申告した人の課税所得が減るので、その人のふるさと納税の上限だけが下がります。夫婦それぞれが寄付している場合、申告しなかった側の上限は変わりません。

セルフメディケーション税制でも同じですか

同じ考え方です。セルフメディケーション税制も所得控除なので、課税所得が減り、ふるさと納税の上限も下がります。控除額の上限が88,000円と小さいぶん、下がり幅も小さくなります(目安で2,000円前後)。医療費控除との併用はできず、どちらか一方を選びます。

ワンストップ特例を申請したあとで医療費控除に気づきました

確定申告で、医療費控除とふるさと納税の寄附金控除を両方書いてください。ワンストップ申請は無効になりますが、確定申告に書けば控除は受けられます。ワンストップ申請を忘れたときの手続きと同じ流れです。

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